歌うクジラ

2011年04月15日

歌うクジラ



2001年9月11日に
アメリカでおこった同時多発テロは、

「911」

として、世界中に記憶されることとなったが、
今回の、東日本大震災は、

「311」

として僕らの記憶に残ると思う。


その前日。

3月10日の深夜。正確には3月11日の午前2時ごろ
読了した本がこれ。



歌うクジラ 上歌うクジラ 上
著者:村上 龍
販売元:講談社
(2010-10-21)
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歌うクジラ 下歌うクジラ 下
著者:村上 龍
販売元:講談社
(2010-10-21)
販売元:Amazon.co.jp
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2022年のクリスマスイブ。ハワイの海底で、
グレゴリオ聖歌の旋律を正確に歌う、
ザトウクジラが発見される。

細胞を分析した結果、驚くべきことに
そのクジラの年齢は、1400年であることが
判明する。

そして、その細胞を解析することにより
ついに人類は、不老不死の遺伝子を特定する。
その遺伝子は「Singing Whale=歌うクジラ」と呼ばれ、
人類は「命の長さ」を操る時代を迎える。



・・・という、なんとも村上龍さんの作品らしい、
たまらない設定です。
そして、この小説の舞台は、さらにその100年後の世界。


人間は、この「SW遺伝子」と「驚異的なテクノロジーの進化」
をもって、ついに「理想社会」を実現しているのだけれど、

この「理想社会」とは、
人間を「階層」に区別し、「徹底的な棲み分け」を実現
させている社会。


「最上層」「上層」「中間層」「下層」「最下層」。


下の層には、「上がある」ことを知らせず
「こういうものだ」ということを子供のころから
刷り込んでいき、上層の人々のために生産活動して
一生を終わらせれば、何の不満もない世界になる。

最上の層には、「下がある」ことで
不満をなくし、圧倒的な特権を与える。


そして、そのシステムへの叛乱には、
圧倒的な管理テクノロジーのもと
「容赦のない」管理が行われている。


結果、そこには、全く軋轢も摩擦もなく
トラブルもない(というか起こせない)。
まさに、「理想社会」がある。

この小説は、

主人公である、一人の「最下層」の少年アキラが、
ある「重要な情報」を持って、
全ての「層」を通過して、
「最上層」まで運んでいくまでの物語だ。

日本人の未来と、
日本人の幸せと、
そして、
人間が「生きる」意味を、
真っ正面から投げつけられた作品だった。


様々な分野の「テクノロジー」が圧倒的に進み、
命の長さまでも操るまでになった人類が
「理想社会」を追求すれば追求するほど、
異常で、グロテスクなことが沢山おこる世界
なっていっている様は、

現在の社会にも、その兆しが見えている気がして
ゾッとした。




そこに、東日本大震災がおこった。


すべての生活技術は流され、
人類が最も効率的に電気を作る技術が暴走し、
国全体を危うくしている現実。

「結局、自然が最強で
 人類は、自然と共有していくべきだ!」

という感じのことを、
わざわざここで書きたいのではない。


東北で、被災された方々の日常。

特に子供たち。

今まで、
野球選手や看護婦さんだった、
将来の目標が、

この日を境に

「まずは、生き延びること」

になった。 




昨日、全国経済同友会セミナー
「緊急日本復興会議」

というイベントに参加してみた。

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全国から1200名あまりの経営者や会社役員クラスの
方々が揃う中で、
基調講演で出演された、大前研一さんの
毒舌あふれる「真実」のリポートは面白かった。

中でも、

「この震災と、その影響を機会に、
 江戸時代や、明治時代から続くシステムから
 脱却して、国を新しいものにしていき、
 日本の生きる道を今こそ模索すべき」


というテーマのもと、
具体的な例をあげて話をされた内容が、
とっても、今の心境に沁みわたった。

例えば、
明治時代の「戸籍法」はそのまま運用されており
この時代にも、デジタルでの戸籍のデータベースが無い・・・・
とか、
「競争力がない産業が補助金で延命されて、超非効率な
 ことになってる」とか・・・・何十項目もあった。



社会のシステム。


「そういうもんだ」
「仕方ない」

そういう感じで、受け入れてしまう「システム」。


その「システム」のせいで、
国が、凄くなったり、落ち目になったり、
もっと言えば、人間の「種類」も違うものに
なったりしていく。


今は、
助け合おう!
支え合おう!

という人間が本能的に持つ「思いやり」の
精神が、復興を後押ししているけれど、

どっかで、

政治的なシステム

が必要になってくるのは、絶対。


そのシステムが、

10年後・30年後・100年後の

日本人を凄いものにして、
皆が幸せになるようなシステムなのかを

残念ながら、
今の時点で、


僕らは「確信」できない。




3月10日の夜。
自分にとってのエンターテイメント
として呼んだ、
村上龍さんの「歌うクジラ」。

思い返すと、凄くリアルで、
今は読み返そうとは思わない。



なぜなら、
今回の震災後、


政治家や科学者や官僚や東電社員などじゃなくても、
政治や社会や生活や原発の

様々なものの「システム」を
根こそぎ考えなければいけない


という、

今までに、おかれたことがない
きつく不安な精神状況になっているからだと思った。










cromagnon69 at 17:30|PermalinkComments(0)TrackBack(0)
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